小林椋: オブジェ『OBJECT』

Text: SUB-ROSA

Art________3.13.2023

 小林椋によるオブジェ『OBJECT』がSUB-ROSAのStoreで販売開始された。

Photography: Koichi Takagi

 小林は多摩美術大学環境デザイン学科へ入学後、現代音楽への関心から情報デザイン学科へ転科。卒業制作ではオブジェクトのキネティックな関わりから発生する音を点在させた作品『蚊帳をうめる』を発表した。以降は音の要素を全面に押し出すことはなくなったが、モーターが仕込まれた造形物が反復運動を行う、という表現はこの頃から見られる。その後、彫刻や素材への関心から京都市立芸術大学大学院修士課程彫刻専攻を修了。時里充とのユニット「正直」では、モーターと養生テープを用いた即興演奏を行っている。

蚊帳をうめる,2015

意志を貫くより、制作過程で起きたことをうまく取り入れていきたい


 カラフルでどこか愛らしい質感をもつ装置群が、ぎこちない動きを繰り返す。それらが不意に同期する光景は鑑賞者にさまざまな解釈を誘発するが、小林に明確な表現意図はないという。オブジェの形状は60年代のモダニズムの影響があると自認するものの、あくまで作品内での機能を求めた結果であり、材質の素材感を薄め匿名性を高めるよう加工を施している。こうした姿勢は制作工程のほとんどを手作業で行うことと関連していると説明する。 

「あんまり自分の考えを信用していないんです。手でものを作っていると、どれだけ具体的に完成形をイメージして作っていても、上下を逆にしたほうが良くなる、みたいなことが頻繁に起こる。自分の外にあるもののほうが広いし、そっちを信用するというか。自分の考えや意志を貫くよりも、制作過程で起きたことをうまく取り入れていきたい」。

 今回発売された『OBJECT』にも天地はないが、作品ではなく“オブジェ”という位置づけとした。「造形物それ自体は作品として扱っていなくて、あくまで作品を構成する要素のひとつ。ある仕組みや構図の中に取り入れられたり、動かされるための存在です」

 製造の特性から、25個限定の受注生産で先着順の締め切りとなる。応募はSUB-ROSAのStoreから。

小林 椋

1992年東京都生まれ。美術家。2017年多摩美術大学大学院修士課程情報デザイン領域修了。2019年京都市立芸術大学大学院修士課程彫刻専攻修了。近年の展覧会に「ヌー・フォー・フィーヌ・フェニ・ファー」(N神田社宅,東京,2022)、「妙な穴面/巻き上げる山すその速さはイモのように固い」(biscuit gallery,東京,2021)、「ネを見に峰に目をね」(TAKU SOMETANI GALLERY,東京,2020)、「州ん」(ギャラリーN,愛知,2020)などがある。

OBJECT (SOLD OUT)

¥20,900

抽象的で愛嬌のあるフォルムやカラーリングが特徴的な、美術家・小林椋によるレジン製のオブジェ。作品とは別軸の「オブジェ」という位置付けで制作されたもの。限定25点。 Size 幅×110 高さ×240 奥行き×80(mm)※正面を向いた際の表記です。 Ma...

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