小林椋によるオブジェ『OBJECT』がSUB-ROSAのStoreで販売開始された。
小林は多摩美術大学環境デザイン学科へ入学後、現代音楽への関心から情報デザイン学科へ転科。卒業制作ではオブジェクトのキネティックな関わりから発生する音を点在させた作品『蚊帳をうめる』を発表した。以降は音の要素を全面に押し出すことはなくなったが、モーターが仕込まれた造形物が反復運動を行う、という表現はこの頃から見られる。その後、彫刻や素材への関心から京都市立芸術大学大学院修士課程彫刻専攻を修了。時里充とのユニット「正直」では、モーターと養生テープを用いた即興演奏を行っている。
州ん,2020,ギャラリーN
Photo : ToLoLo studio時里充とのユニット「正直」
意志を貫くより、制作過程で起きたことをうまく取り入れていきたい
カラフルでどこか愛らしい質感をもつ装置群が、ぎこちない動きを繰り返す。それらが不意に同期する光景は鑑賞者にさまざまな解釈を誘発するが、小林に明確な表現意図はないという。オブジェの形状は60年代のモダニズムの影響があると自認するものの、あくまで作品内での機能を求めた結果であり、材質の素材感を薄め匿名性を高めるよう加工を施している。こうした姿勢は制作工程のほとんどを手作業で行うことと関連していると説明する。
「あんまり自分の考えを信用していないんです。手でものを作っていると、どれだけ具体的に完成形をイメージして作っていても、上下を逆にしたほうが良くなる、みたいなことが頻繁に起こる。自分の外にあるもののほうが広いし、そっちを信用するというか。自分の考えや意志を貫くよりも、制作過程で起きたことをうまく取り入れていきたい」。
今回発売された『OBJECT』にも天地はないが、作品ではなく“オブジェ”という位置づけとした。「造形物それ自体は作品として扱っていなくて、あくまで作品を構成する要素のひとつ。ある仕組みや構図の中に取り入れられたり、動かされるための存在です」
製造の特性から、25個限定の受注生産で先着順の締め切りとなる。応募はSUB-ROSAのStoreから。