大野陽生 : フィギュアと彫刻のあいだを目指した新作『泥を吐く魚と漁師』

Text: SUB-ROSA

Photography: Koichi Takagi

Art_______12.29.2021

大野陽生による立体作品『泥を吐く魚と漁師』がSUB-ROSAのStoreで販売された。

大野陽生は武蔵野美術大学造形研究科で彫刻を専攻。ロマネスク彫刻などの宗教的な美術表現やモチーフに惹かれ、主に石を芯とした人型の塑像を中心に制作してきたアーティスト。在学中の石彫から始まり、油粘土やパテ、ワックス、発泡スチロール、また本作にも使用したウレタン樹脂など、使用する素材は多様に変遷してきた。

作品に帯びる宗教性については意識的ではなく、あくまで制作後に認識することのほうが多いという大野。資料にあたるうちに作品と宗教美術の関連に気づき、その事実が関心を掻き立てる。そうした史実との相互作用のなかから生まれる自身の作品について、大野は「日常にあるさりげないお守りや、ゲームのセーブポイントのような存在」と表現する。作家の手の痕跡を残しながらも、アノニマスで慎ましやかな造形は、信仰心よりも原初にある「信じる」という行為に目をやる大野の姿勢が反映されている。

「助教・助手展2021 助教・助手研究発表(武蔵野美術大学, 2021)」で発表した本作の原型。

『泥を吐く魚と漁師(The Mud Vomiting Fish and The Fisherman)』と題された本作で、大野はウレタン樹脂を用いることで、ホビーライクな存在を目指した。時間軸のない道祖神のような佇まいだからこそ、経年による変化が楽しみな作品でもある。

作品の特性から、3個限定の受注生産で先着順の締め切りとなる。応募はSUB-ROSAのStoreから。

大野 陽生

2017年、武蔵野美術大学大学院修士課程造形研究科美術専攻彫刻コース修了。
主な展示に、2017年個展「EXODUS」(Gallery b.tokyo)、2017年連続個展企画「、むしろ例えてしまう」より個展「HOAX」(東京造形大学ギャラリーmime)、2018年個展「NEIGHBOR」(代田橋納戸gallery DEN5)、2018年グループ展「共同体について」(URANO)、2018年グループ展「TRACTOR BEAM vol.1 ataxia」(芸宿)、2018年グループ展「small good things」(HAGIWARA PROJECTS)、2019年グループ展「腕の向き、膝の位置」(gallery TOWED)、2019年グループ展「TRACTOR BEAM vol.2 -TALISMAN-」(WALLA)などがある。

泥を吐く魚と漁師

¥79,200

宗教的な美術表現やモチーフを背景に、様々なマテリアルを横断しながら彫刻作品を発表してきたアーティスト・大野陽生による複製彫刻作品。 本作は自身のドローイングを原点に原型を制作。硬質ポリウレタン樹脂と塗装による表現でホビーライクな存在を目指した。 限定3点...

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